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無痛分娩を検討している妊婦さんの中には、麻酔を使うことで吐き気が起こるのではないかと心配されている方も多いのではないでしょうか。出産時の痛みを和らげてくれる無痛分娩ですが、麻酔による副作用について事前に知っておくことで、安心して分娩に臨むことができます。
この記事では、無痛分娩中に吐き気が起こる原因や具体的な症状、そして対処法について分かりやすく解説します。

無痛分娩で吐き気が起こる原因
無痛分娩中の吐き気は、いくつかの要因が関係しています。主な原因について詳しく見ていきましょう。
麻酔薬の影響
無痛分娩では、硬膜外麻酔という方法が最も一般的に使われています。これは、背骨の中にある硬膜外腔と呼ばれる狭い空間に細いカテーテルを挿入し、そこから局所麻酔薬を注入する方法です。
麻酔薬そのものが体に作用することで、吐き気を感じることがあります。これは麻酔薬が中枢神経系に影響を与えるためで、無痛分娩に限らず、さまざまな麻酔で起こりうる一般的な副作用の一つです。
ただし、無痛分娩で使用する麻酔薬の量は比較的少ないため、お母さんの意識はしっかりと保たれており、赤ちゃんへの影響もほとんどありません。
血圧低下
無痛分娩中の吐き気の最も大きな原因として挙げられるのが、血圧の低下です。
硬膜外麻酔を行うと、麻酔薬が交感神経を遮断する働きをします。交感神経は血管を収縮させて血圧を維持する役割を担っているため、麻酔によってこの働きが弱まると、血管が広がって血圧が低下することがあります。
血圧が下がると、動悸や気分不良、そして吐き気を感じることがあります。特に麻酔を投与した直後は血圧が低下しやすい時間帯です。
このため、無痛分娩中は15分から30分おきに頻繁に血圧を測定し、赤ちゃんの心拍も胎児心拍陣痛モニターで常に確認しながら、安全に分娩が進むよう管理されています。
子宮収縮
陣痛が来ているときは、無痛分娩を受けているかどうかに関わらず、妊婦さんの胃腸の動きが鈍くなることが知られています。
子宮が強く収縮することで内臓が圧迫され、胃腸の働きが通常より低下してしまうのです。この状態で食事をすると、消化がスムーズに行われず、嘔吐してしまうリスクが高まります。
そのため、無痛分娩では麻酔を始めてからは基本的に食事をとることができません。ただし、水分は飲むことができ、点滴によっても水分補給が行われます。
無痛分娩中の吐き気症状と対処法
実際に吐き気を感じた場合、どのような症状が現れるのか、そしてどのように対処されるのかを知っておくことで、落ち着いて対応することができます。
吐き気の具体的な症状
無痛分娩中の吐き気は、軽い気分不良から実際に嘔吐してしまうケースまで、程度はさまざまです。
血圧低下に伴う吐き気の場合は、以下のような症状を伴うことがあります。
- めまいやふらつき
- 冷や汗
- 動悸
- 顔面蒼白
- 全身の脱力感
これらの症状は、血圧が正常値に戻ることで改善されていくケースが多いです。
吐き気は麻酔開始直後から手術翌日にかけて感じることが多いとされています。多くの場合、一時的な症状で、適切な処置によって改善します。
また、痛み止めの薬に含まれる麻薬成分の影響で、軽いかゆみを感じることもあります。これは副作用の一つですが、我慢できる程度であることがほとんどです。
吐き気への対処法と予防策
無痛分娩中に吐き気が起きた場合の主な対処法には、以下のようなものがあります。
血圧低下への対処
血圧が90/50mmHg以下に下がった場合は、すぐに対応が行われます。
点滴の増量が最も一般的な対処法です。輸液を全開にすることで血液量を増やし、血圧を上昇させます。分娩前からビカネイトやボルベンといった輸液を投与し、あらかじめ血圧低下を防ぐ予防策も取られています。
また、必要に応じて血圧を上げる薬を使用することもあります。
体位の変換も効果的です。仰向けの姿勢より横向きの方が血圧は下がりにくいことが知られているため、左側を下にした横向きの姿勢(子宮の左方転位)をとることで、血圧低下を防ぐことができます。
麻酔薬を投与した後の15分間は、上半身を少し起こしたファーラー位という姿勢を保つことで、麻酔が片側だけに効く「片効き」を防ぐこともできます。
吐き気止めの使用
吐き気が強い場合は、吐き気止めの注射薬を使用して症状を和らげることができます。医師や助産師に気分が悪いことを伝えれば、適切に対応してもらえますので、我慢せずに伝えることが大切です。
水分管理
無痛分娩中は食事をとれませんが、水分は飲むことができます。ただし、胃腸の動きが鈍くなっているため、一度に大量に飲むのは避けた方がよいでしょう。
点滴による水分補給も継続的に行われるため、脱水の心配はありません。
安静の保持
麻酔中は下半身の感覚や動きが鈍くなるため、基本的にはベッド上で過ごします。急に立ち上がったりすると転倒の危険があるだけでなく、血圧が急激に変動する可能性もあるため、安静を保つことが重要です。
トイレは必要に応じて管を入れて(導尿)尿を排出させます。麻酔が効いているので、導尿による痛みはありません。
その他の副作用への対処
吐き気以外にも、無痛分娩では以下のような副作用が起こる可能性があります。
頭痛は、硬膜外カテーテルを留置する際に、誤って脊髄液を満たしている袋に針穴が開いてしまった場合に起こることがあります。発生頻度は1%未満とまれですが、もし起こった場合は横になったり、水分を十分にとったり、痛み止めを飲むことで対処します。典型的には麻酔の約24時間後に起こり、座っているときに強くなり、横になると軽くなるのが特徴です。
発熱も副作用の一つで、38度以上の高熱が出ることがごく稀にあります。詳しい原因は分かっていませんが、全ての産婦の約20%に見られるという報告もあり、分娩が終わると自然に解熱することが多いです。
足のしびれや力が入りにくくなることもよくある副作用です。これは、痛みを伝える神経と足の運動や感覚をつかさどる神経が近くにあるため、麻酔が足の神経にも効いてしまうことで起こります。その程度は個人差が大きく、無痛分娩のやり方によっても異なります。
無痛分娩を実施する医療機関では、これらの副作用に対応できるよう、蘇生設備や医療機器、母体用の生体モニターを配備し、すぐに使用できる状態で管理しています。万が一の事態に備えた体制が整えられているため、安心して無痛分娩を受けることができます。

まとめ
無痛分娩中の吐き気は、主に麻酔薬の影響や血圧低下、子宮収縮による胃腸機能の低下が原因で起こります。医師や助産師は頻繁に血圧を測定し、点滴の調整や体位変換、吐き気止めの投与など、適切な対処を速やかに行ってくれます。もし気分が悪いと感じたときは、遠慮なく伝えることが大切です。副作用について事前に理解しておくことで、より安心して無痛分娩に臨むことができるでしょう。ご自身に合った出産方法を選ぶために、医師とよく相談することをおすすめします。